間もなくオープンから5周年を迎えるBAR SANCTUARYに、新たな調度品がやって来ました。
「エンジンテレグラフ」(正式名称:Engine Order Telegraph)と呼ばれるそのツールは、元々は船のブリッジから機関室へエンジンの出力調整や停止の指示を伝えるための装置。
そのアンティークな佇まいを、港町横浜の酒場ではしばしば目にします。
かつて勤めた中華街のBARでも、ジュークボックスと共にひと際存在感を放っていました。
ハンドルを動かすと「チリンチリン」と音が鳴り、より一層船内のような雰囲気を高めてくれます。
しかし鳴らしたら最後、横浜のBARでは「暗黙のルール」が存在し、これを鳴らした人はその場にいる全員に1杯ずつご馳走しなければなりません。
しかも恐ろしい事に「知らずに鳴らしてしまった」などという言い訳は一切通用せず、そのルールは絶対です。
1970年代以前、かつての船員が港近くに店を出す際に、オブジェとしてカウンターに設置したのが始まりと言われています。
そして下船した船乗り達が酒を飲みにやって来ると、今よりも危険が多かった航海から無事に戻った祝いに、エンジンテレグラフを鳴らして乗船中の稼ぎを惜しげもなく注ぎ込み、皆に酒を振る舞ったそうです。
その名残りで、今でも横浜の酒場では夜な夜なこの音が鳴り響いています。
「緊急事態宣言」という困難な航海にひとつの区切りが付いたお祝いに、今宵はひとつ派手にエンジンテレグラフを鳴らしてみてはいかがでしょうか。
BAR SANCTUARY